倉庫生活 extra day 5 最後の操觚

今日、起きると朝の10時頃だった。睡眠時間は4時間程度なのでフラフラだ。今日、友人と出かける用事があって熱田に行った。今日は本当に倉庫生活最後の日だ。明日の夕方には、僕は実家に戻っていることだろう。

その男と、僕は夜になるまで話していた。彼の出で立ちは、僕にある通底した概念を思わせた。人間は神にはなれない。それだから、彼は肉体を超えたところで超越的な何かを育んでいたのかも知れない。あるいは、それは僕の中に育まれていた何かなのかも知れなかった。夕日を見たとき、君は美しいと思うだろうか。夜空を渡る絹地の銀河を仰いで、君は夢を見るだろうか。或いは半裸の処女に。屍体を喰う数多の蛆に。素晴らしいとは思わないか。君の魂は泣いているか。恋人はいるか。怒りはあるか。ある夢を繰り返し見ているか。美しい過去はあるか。路傍を通り過ぎる列車の轟音が正弦波の連なりに聞こえるか。色はあったか。アダムとイヴの検死結果をどう解釈するのか。時は過ぎ、夕焼けは僕らの目に映ることなく地平へと落ちた。だが、夜空には輝く星と排気ガスの規則正しいモワレが広がっている。空気中にはコロナウイルスが舞い、車窓から漏れる光が実家の夕飯の香りを運ぶ。クロスモーダル。眠くて頭が働いていない。こんな時、プラトンなら何を言うのだろうか。哲人らしく高説なんか垂れずに、ただ目の前の里芋から漂う醤油の香りに垂涎してくれるのだろうか。

浅野いにおの「おやすみプンプン」を読み終わった。昨日読み始めて、最終巻の13巻まで一気に読んだ。わりあい有名な漫画らしいが、頭がおかしくなりそうなほど良い漫画だった。優しさの果てにある悲しみ、涙すべき狂気、その全てを包含し抱擁する愛の意志。虚無の日常と絶望的幸福の押し寄せる波。原罪。生きることの苦しみ。無意味な生に対する、涸れるほどに暴力的な賛美歌。馬鹿でないなら読んだ方がいい。ここ数年間に触れた創作物の中では出色と言ってよい。大名作である。ただしストーリーは極めて暗いので、人を選ぶ。

おやすみプンプン 1巻 浅野いにお - 小学館eコミックストア|無料試し読み多数!マンガ読むならeコミ!
おやすみプンプン

このティッシュ箱のような2畳間で過ごした1か月、僕は大変楽しかった。住人のkamijo、サクライ、そでの3名、オーナーの江坂には心からの感謝を。ここに訪れた多くの他者に愛を。僕は本当に嬉しかったのである。1ヶ月+5日という期間は、僕がここで社会を仮想すること、見得なかった自分を見ること、努めること、堕すること、その他諸々において必要十分な期間であったように思う。しかも、類い希なる同居人たちの偉大さと寛容さは、僕という異分子の存在を1ヶ月強ものあいだ尊重するに至ったのだ(などという自虐的なことを、もはや言うまい。ここでの生活で得た学びは、もはや山積してこの八雲を中心に堆く積もっているのさ)。ともかく、僕はやってのけたのだ。明日実家に帰った後、僕はかつての僕とは少しだけ違った僕になっていると思う。そうやって”ゴール”に近づいていけたらいいのだろうかと、今は思っている。

君が、そう思わなくても構わない。だから僕と話をしよう。酒を飲みながら、気楽に、常夜灯の下で。月の光に情けをかけよう。家の明かりに涙を零そう。ここはそういう場所だった。僕はひとたび、ここを去る。しかし時間は戻らない。記憶は消えない。心配なことなど何もない。アデュー。良い旅を。

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