倉庫に暮らしてから、眠りが浅くなった。単に寝床が変わったからだとは思うが、昨夜は何回も半覚醒状態になっていた記憶がある。断片的な悪夢を5つも6つも見ていた気がするが、内容は覚えていない。僕は、悪夢は案外嫌いではない。夢というヴァーチャルな空間で体験する苦痛に満ちた体験の限りは、非現実的で非日常的で夢がある。夢だけに。ちなみに、昨日仕込んだ半熟味玉はいい仕上がりだった。
たまごの漬け液がもったいなかったので、煮切ってから鶏肉を漬け込むことにした。サクライくんとスーパーへ行って、諸々買い出し。彼が夕飯に鶏の炊き込みご飯を作ってくれるらしいので、僕はカラスノエンドウを収穫しに大学へ行った。カラスノエンドウは、ピーピー豆と俗に呼ばれるマメ科の雑草だが、かつては野菜として栽培されていたこともある。エンドウ豆のような香りがして、鶏肉に合うと思う。
家から持ってきたヨーグルトメーカーで、鶏肉を低温調理する。副産物の鶏皮は、じっくり炒めて燻製塩で和える。そういえば、僕が引っ越してくるときに家で作った自家製ジンジャーシロップを持ち込んだのだが、kamijoくんがそれでジンジャーハイボールを作ったら美味いと言っていたので、試してみる。
え、美味いな。そのままだと甘すぎる仕上がりだったジンジャーシロップが、ウイスキーのスモーキーさ、苦みと合わさって良いバランス感になっている。これはこの飲み方が正解かも知れない。
こんな風に文章を書いていて、自分のやっていることが端から見たらだいぶキラキラして見えるのではないかと気づいた。自家製の煮卵、ジンジャーシロップ、そして燻製塩なんていう意識の高い単語たち。先日は哲学の授業に感銘を受け、カルヴァドス・シードルなどという洒落た酒に舌鼓を打った。しかし、忘れてはならない。僕は2畳のよどんだ倉庫に住み、昼前にやっとこさ起床して、1日をおよそパジャマだけで過ごすような男である。ここに越してきてからまだ洗濯もしていない。ただ僕にとって、日常を彩るものは教養と実践であるだけだ。
夕飯は炊き込みご飯とエノキの炒め物、炒り卵だった。他人が作ってくれた飯は美味い。低温調理で仕込んでおいた鶏胸肉も、柔らかくもちっとした食感に仕上がり美味かった。